鏡面磨き直しの例
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錫製お屠蘇一式 |
酸化変色をした錫器の鏡面の磨き直しです。錫器は使用による小傷や経年変色による古色は味として、錫器の魅力を引き立てますが、場合によっては鏡面の光沢のある状態の方が好ましい時もあります。今回のお屠蘇一式もそうでしょう。新しい年明けに使いたいものですので、輝いている方が気分も高揚します。
【磨き方工程】
手作業での磨き方です。多少の使用感は味になりますので、神経質に気にする必要も無いと思います。尚、平面の錫の鏡面磨きは難しく熟練の技を要します。
依頼引受時の状態。 製造から50~60年ぐらい経過していると思われます。歪みもあります。
歪んでいる箇所を修正し、磨き作業に入ります。
特に目立つ箇所を挙げます。
盃同士を直接重ね合わせて、手で包み込むようにして持ち運んだと思われます。表面と高台の底部分が擦れ、深い傷となっています。盃の直接の重ね合わせは錫には不向きです。又、荒いスポンジで洗った傷跡もあります。
荒いスポンジで洗った為に傷として残っています。又、ぶつけた際に生じた深い引っかき傷もあります。
【確認のための磨き】
一度、軽く酸化変色を金属磨き材(ピカール)で磨き、傷を再確認します。酸化変色により目立たなかった小傷もよく見えてきます。
先ず、外側の洗浄では落ちないこびり付いた汚れをキサゲで剥ぎ落とします。
刻印に「本錫」とありますが、純錫(99%以上)ということではありません。状態にもよりますが、今回は800番ぐらいの耐水ペーパーから全体を磨いていきます。1500番ぐらいまで段階的に磨きます。ペーパーに付着する錫で傷を付けないよう注意します。当工房では行いませんが、職人さんによっては、この後に炭研ぎをします。
ガーゼを擦って出る酸化被膜を研磨剤にして更に磨きます。当工房では行いませんが、職人さんによっては、この後に貝粉で更に磨きます。
研磨剤をよく拭き取り、中性洗剤と柔らかいスポンジで洗い、水滴を拭き取って終了です。尚、錫だけでなく金属器全般ですが、水滴がついたまま放置すると水跡が残る場合があります。
【仕上がり】
盃を重ねた末広がりの飾り付けには、盃の間に柔らかい和紙などを挟んで下さい。直接重ね合わせると、高台と盃の鏡面とが接触することで、再び簡単に傷が付いてしまいます。